~歳月人を待たず~

旧ブログ名:歳月不待(さいげつふたい)

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鳥瞰図絵師・吉田初三郎について

【目次】


鳥瞰図(ちょうかんず)絵師・吉田初三郎について

皆さんは、吉田初三郎という方をご存じであろうか。

簡単に解説すると、大正から昭和前半(戦前)にかけて活躍されていた鳥瞰図(ちょうかんず)絵師で、自身が制作した京阪電鉄パンフレットの絵が、当時皇太子だった昭和天皇に「きれいで解(わか)りやすい」と褒められたことがきっかけで、鳥瞰図絵師となった方である。

鳥瞰図(ちょうかんず)とは、俯瞰図(ふかんず)とも言い、鳥目線で空から地上を眺めた様子を描いた図のことを言う。

著作権などの絡みもあり、直接画像を掲載できず歯がゆいが、とりあえず作品を見たいという方は、あとで改めて紹介するが、下記リンク先を参照して欲しい。

吉田初三郎式鳥瞰図データベース

ファミコン世代であれば、ディスクシステムで発売された、初代「ゼルダの伝説」の画面を言えば通じるであろうか。参考までに過去記事へのリンクを貼り付けておく。

saigetsufutai.jp

今ならさしずめ、ドローンを使って上空から撮影した地上の様子を絵図にする、と言った方が早いかもしれない。

しかも、初三郎が活躍していた時代には、ドローンやコンピューターなど当然ないので、現地調査をしたうえで、最終的には想像で絵に描いていた。

なお、初三郎自身は芸術家や画家ではなく、当時の鉄道会社や自治体、デパートの依頼で旅行パンフレットなどの絵図をメインに作成する、現代で例えるとイラストレーターのような方である。(パンフレット裏面の観光地紹介や、関東大震災の絵図など、一部例外あり。)

初三郎作品の特徴

極端に大きくデフォルメを加える

初三郎の描く鳥瞰図最大の特徴としては、極端に大きくデフォルメを加えること。

基本的には、依頼主(クライアント)からの依頼を元に、現代で言うところのパンフレットを作成しているので、見せたいもの、強調したいものを、実際の規模や縮尺を大きく無視して描いていた。

それこそ、施設1つを山1個分の大きさにする…というか周囲の山々が小さくみえるほどに施設を大きく描くほど。

なお、初三郎と同じことを令和の現代で行うと、誇大広告を指摘される可能性が高いが、参考になる部分はとても多いと思う。

実際には見えない土地も描く

現地では実際に見えないのに、想像力を大きく膨らませて、見えるはずのない景色を描くのも、初三郎作品の特徴のひとつである。

例えば、京都からは見えない富士山のほか、極端な場合は、日本国内の景勝地から日本海を隔てた上海やウラジオストク満州(当時の朝鮮半島)まで描くほどだった。

私と初三郎作品との出会い

私が吉田初三郎の事を初めて知ったのは、実はよく覚えていない。つい数年前だと思うが、当時住んでいた東京・多摩湖周辺の歴史をネットで調べていた時が一番有力であるが、後述するデータベースには含まれていないので、あまり自信はない。

あとは、地図研究家・フリーライターの今尾恵介氏の著書にも、幾度も初三郎の鳥瞰図について、数ページ程度で紹介されているが、本を読んだ時点で、私も既に知っていたと認識している。

(地形図でたどる日本の風景/今尾恵介 著/日本加除出版/2019年10月/139~142ページ)

(地図バカ/今尾恵介 著/中央公論新社/2023年9月/44~48ページ)

鑑賞方法

ネットの場合

初三郎の作品について、とりあえずネット鑑賞をしたいということであれば、下記リンク先をお勧めする。

国際日本文化研究センター 吉田初三郎式鳥瞰図データベース

データベースに登録されている個々の作品について、フルスクリーンで拡大表示もできる。

ちなみにデータベース公開点数について、タブ「その他」以外の点数をざっと数えてみたところ、2025年6月26日時点で850点を超えていた。

弟子と共同で作ったとはいえ、生涯で1000点とも2000点とも言われる吉田初三郎の作品数は、本当に驚かされるばかりである。

書籍の場合

解像度というか、表示の細かさでは上記データベースより劣るものの、書籍で良ければ、数点ほど出版されており、個人的には以下の本をお勧めする。

吉田初三郎鳥瞰図集(昭文社/2021年発行)

できれば電子書籍ではなく、実際の本を勧める。(もっとも本書はKindle版がないが。)

理由は絵本のような大型本で、見開きで大きく見ることができるため。

ただ、元々のパンフレットが横に長すぎる場合が多々あり、一応4ページ見開き(観音折り)もあるのだが、一部の作品に限られるのが残念なところ。

とりあえず実際の本を見てから購入を決めたいということであれば、最寄りの図書館で探してみるのもアリだと思う。

その他、鑑賞方法

他には、国内では青森県八戸市の私設美術館?で見ることが出来る模様。

なお、美術館のドメインwhoisで見ても、ほとんどの項目がREDACTED(編集済み)と書かれて詳細が不明であり、ドメイン所有者も不明で確証が取れないため、当ブログでは直接リンクは貼らないことにした。悪しからず。(Wikipediaの記事でも直接リンクを貼らず、アーカイブ経由にしているのは、whois情報が理由と思われる。)

【おまけ】アニメ「前橋ウィッチーズ」

おまけ情報。2025年4月~6月に放送されていたアニメ「前橋ウィッチーズ」のオープニングにも1カット、吉田初三郎が描いた前橋周辺の鳥瞰図が登場している。一応公式YouTube動画へのリンクを貼っておく。

youtu.be

※1分18秒付近

公式サイト> https://www.maebashi-witches.com/